本書Topへ


あとがき

2014年のこと。しばらくの間、本の翻訳を中心にやっていたのですが、翻訳の途中で新版が出てしまった翻訳書に関して編集者の方と意見が食い違い、「喧嘩別れ」をしてしまいました*1

主要な取引先を失ってしまったもののお気楽な性格の私は「まあ、なんとかなるさ」と仕事探しを始め、その一環としてプログラミング講座(とストレッチ講座)をやってみることにしました。その2年前ぐらいに、同じ出版社の仲介で通信教育の会社から3巻からなるDVD版のJavaScript講座を作成していたので、それをベースに対面の講座を始めてみたのです*2

「ストリートアカデミー」(現「ストアカ」)で宣伝をして、あるウィークデーに、初めて開いた講座の参加者は、男性、女性お一人ずつ。

「やっぱり、お休みの日のほうがいいかな?」と思って次回からは休日に開催してみました。プログラミングやUI/UX関連の翻訳書を何冊か出していたのがよかったのか、2回目の参加者は14人。

それ以降、新型コロナウィルスで中止を余儀なくされるまで、途中から始めた「実習編」も含め、ほぼ月に2回のペースで開催し、他サイト経由の受講者も含め、減った分の収入を補うのに十分な数の方々にご参加いただきました。

受講生の方々の反応を見て、「こんなところでつまずくのか。たしかに、初心者にはわかりにくいか〜」「こうしたほうがわかりやすいかな?」と試行錯誤を繰り返して「改良」を重ねました。

新型コロナウィルスの影響で対面の講座が開けなくなったのは、実習編の問題集を3巻まで作り、繰り返し参加していただけるようにした頃でした。内容もだいぶ固まってきたところでもあったので、「入門編」の内容に沿った動画を作って、無料公開することにしました*3

そして、最後の仕上げがこの本というわけです。

翻訳も大変ですが、自分の本を書くのも大変でした。翻訳の場合のような「枠組み」がなく、章立てをゼロから考えなくてはなりません。また、細かい点についても「原著と同じ」という手が使えません。これは想像以上に大変な作業でした*4


そんな大変な作業を、陰に陽に支えてくださった皆さんには心から感謝しております。

この本を執筆する直接のきっかけとなったのは、2019年5月にオーム社の橋本享祐さんからいただいた、翻訳のご依頼でした。「もちろん翻訳ではなく、JavaScriptの入門書を新たにというのもありです」というお言葉をいただいていたのが頭に残っていて、「ビデオの次は本にしたいな」と思ったときに、最初に橋本さんのことが浮かんだのです。執筆中は橋本さんをはじめとするオーム社の皆さんから、全体の構成から技術的な細部の内容まで、数多くのアドバイスをいただきました。まことにありがとうございます。

また、これまで筆者の翻訳や執筆に寄り添ってきていただいた三輪幸男さん(ピアソン・エデュケーション)、鈴木光治さん(チューリング)、宮川直樹さん(オライリー・ジャパン)、石橋克隆さん(インプレス)、𢰝木敏男さん(河出書房新社)を始めとする編集者の皆さん。筆者をここまで鍛えていただきありがとうございます。

この本を書いている途中で、どうして筆者がプログラミングに夢中になったのかを思い出そうとしたところ、感謝の気持ちをきちんとお伝えしていなかった方々がいたことに思い至りました。入り浸りになったコンピュータルームで、大学売店の経理処理などのプログラム作成のアルバイトを、何も言わずに許してくださった国際基督教大学(ICU)の計算センターの皆様。計算センターの方々には、卒業の3年後、(最初の)博士課程の試験に不合格になってしまった際にお邪魔した時には、就職先のお世話までしていただだきました(こちらも所長面接で不合格になってしまいましたが*5)。今まで、きちんとお礼を申し上げる機会もなくてすみません。ありがとうございました。

プログラミングに関しても色々な方々にお世話になってきました。ここでお名前をあげ始めると終わらなくなりそうですので、筆者が最初に就職したリソースシェアリング株式会社で機械翻訳ソフトウェアを一緒に開発した、中瀬純夫部長、古賀勝夫部長(いずれも当時)を始めとする一癖も二癖もある開発者の皆さんに代表していただくことにしました。(AI翻訳に押されて風前の灯かもしれませんが)当時作った翻訳ソフトが、まだ生き残っています! 常識にとらわれずに突き進んだあのときの開発体験が、筆者のその後の(ちょっとヤクザな)プログラマー人生に大きな影響を与えました。ありがとうございます。新型コロナウィルスで中止になっていた飲み会をそろそろ再開しましょうか。

最後になりますが、筆者の文章に対していつも厳しいチェックを入れてくれる、マーリンアームズ株式会社の武舎るみ氏に、감사합니다カムサハムニダ。引き続き、よろしくお願いいたします。


こうして振り返ってみると、プログラミングの実力を上げるには、自分で書きたいコードを楽しんでバンバン書くか、お金を稼ぐために真剣にコードを書くか、が一番効果的ではないかと思います。

書籍などを読むのももちろん無駄ではありませんが、まずは書いて書いて書きまくってみてください。

Happy Programming!

2024年2月
マーリンアームズ株式会社 武舎 広幸

[*1] その後、その編集者の方とは、しばらくして無事「仲直り」をして、それからも翻訳書を何冊か出版しています。

[*2] もうひとつ、ほぼフルタイムで翻訳ソフトの開発もやったのですが、こちらは人事抗争に敗れて、1年で退社しました。「社会勉強」にはなりましたし、翻訳ソフトの最新トレンドを知ることできたので無駄ではありませんでしたが、今でも少しトラウマがうずきます。「人のいいオタク的人間」が多かった昔のソフトウェア業界が懐かしい...。

[*3] 現在この動画をこの本に合わせるようバージョンアップ中です。出版時には完成しているはずですので、この本と合わせてご覧ください。サポートページからどうぞ。

[*4] 技術書を翻訳するときは原著者にブツブツ文句を言うことが多かったのですが、これからは少しそのトーンも柔らかくなるかもしれません。

[*5] 今振り返ると、どちらの試験も「不合格になってよかった」と思っています。人生何が幸いするかわかりません。

●著者紹介

武舎 広幸 (むしゃ ひろゆき)
国際基督教大学、山梨大学大学院、リソースシェアリング株式会社、オハイオ州立大学大学院、カーネギーメロン大学機械翻訳センター客員研究員等を経て、東京工業大学大学院博士後期課程修了。現在、マーリンアームズ株式会社(https://www.marlin-arms.co.jp/)代表取締役。英→日、英→韓、英→中、タイ語→日本語の機械翻訳をはじめとする自然言語処理関連ソフトウェアの開発、コンピュータや自然科学関連書籍の(人間)翻訳、プログラミング講座や辞書サイト(https://www.dictjuggler.net/)の運営などを手がける。
著書に『パソコン英日翻訳ソフト活用法 ── PC‐Transer/ej実践マニュアル』『BeOSプログラミング入門』(以上プレンティスホール、後者は共著)『プログラミングは難しくない! ── ウェブではじめるJavaScript/Perl/Java』(チューリング)、『理工系大学生のための英語ハンドブック』(三省堂、共著)などがある。また、『Building Secure Software ── ソフトウェアセキュリティについて、すべての開発者が知らなければならないこと』(オーム社)、『はじめてのJavaScript 第3版』『インタフェースデザインの心理学 第2版』『初めてのGo言語』(以上オライリー・ジャパン)、『Python基礎&実践プログラミング』『LeanとDevOpsの科学』(以上インプレス)『マッキントッシュ物語』(翔泳社。のちにブッキングから復刊)など50冊を超える翻訳書がある。

個人サイト: https://www.musha.com/



本書Topへ