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英日翻訳講座 翻訳ダンベル
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第150問 日本語の表現に関する問題

以下の文は、いずれも筆者がこの問題作成時点で翻訳している本の初校(校正前の原稿)からとったものです(一部単語を変更してあります)。いずれの文も、筆者は問題があると感じ修正した箇所があります。各文について、筆者がどう修正したか推測してください。また、可能ならばその理由を考えてください。

  1. 最近のほとんどの機種では何らかの形でCMスキップ機能に対応しており、CMを見る時間を節約することができます。
  2. 関数は単に前もって定義しておけるだけでなく、プログラム中で動的に新しい関数を生成することも可能です。
  3. FirefoxとInternet Exploerではイベントハンドラの扱いが異なっていますが、その違いは解決できます。

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解答・解説

それぞれの文を筆者は以下のように直しました。


  1. 最近のほとんどの機種では何らかの形でCMスキップ機能に対応しており、CMを見る時間を節約することができます。
      ↓
    最近のほとんどの機種何らかの形でCMスキップ機能に対応しており、CMを見る時間を節約することができます。
  2. 関数は単に前もって定義しておけるだけでなく、プログラム中で動的に新しい関数を生成することも可能です。
       ↓
    関数は単に前もって定義しておけるだけでなく、プログラム中で動的に生成することも可能です。
  3. FirefoxとInternet Exploerではイベントハンドラの扱いが異なっていますが、その違いは解決できます。
       ↓
    FirefoxとInternet Exploerではイベントハンドラの扱いが異なっていますが、その違いは解消できます。

このような変更は、原稿を読んだときに「何か変だな」と感じて行うわけですが、通常はその理由を考えたりはせずに、「なんとなく」直しています。直感的に直してしまうわけです。

自分で翻訳するだけならばそれで済んでしまうわけですが、ときどき、下訳者の方々や添削課題を提出なさった通信講座の受講生の方々に「どうしてこう直すのか、その理由を聞かせて欲しい」と言われることがあります。直感的にやっていることの理由を問われると「困ってしまう」というのが本音ですが、よくよく考えると理由が説明できることも多いのです。今回も、その理由を考えてみました。

まず、1.の文です。この文の問題点は「ほとんどの機種では」の「では」です。これは「ほとんどの機種は」と直しました。こうすることによって、何が「対応している」かが明確になります。言い換えると、この文の主語が「ほとんどの機種」であるということが明確になるわけです。

これに対して「では」としてしまうと、主体が曖昧になってしまうように感じられます。「ほとんどの機種では○○が何らかの形でCMスキップ機能に対応しており」といったように、別のものが「CMスキップ機能に対応している」のではないかという可能性がでてくるように感じるのです。

2. については、「新しい関数を」の部分を削除しました。冒頭の「関数は」で、「関数」がこの文のトピックであることが宣言されています。これを「、」の後で繰り返すのは「うるさい」感じがしてしまいます。「不要な繰り返しは避ける」のは簡潔な文章を書くための鉄則です。

また、「プログラム中で新しく動的に生成することも可能です」としてもよいかもしれませんが、「動的に生成する」ということは「新しく」生成することになりますので、この「新しく」は不要でしょう。

3. については「違い」は「解決」できるかどうかという問題です。「違い」は「解消」することはできますが「解決」はできません。「問題」は「解決」できますが。

自分が文章に手を入れたとき「なぜ直したくなったのか」を考えてみることは、教える立場にある筆者のようなものにとってはもちろん有用なのですが、学習者にとっても無駄ではありません。自分の文章をより客観的に見られるようになりますし、間違いを分析しておくことにより、同じような場面でピンと来るようになり、同種の間違いを犯す危険を減らすことができるのです。

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