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Webサイトパフォーマンス実践入門     Jeremy L. Wagner著   武舎広幸+阿部和也+上西昌弘 翻訳・監修

監訳者まえがき

2008年に『ハイパフォーマンスWebサイト』(スティーブ・サウダーズ著、オライリー・ジャパン) を翻訳しました。当時、「Webの高速化」と聞くとほとんどの人はサーバ側の処理を速くすることだと考えていましたが、「フロントエンドでできることがたくさんある」ということを教えてくれた画期的な本でした。そのメッセージは簡潔でわかりやすかったせいもあって、いまだに版を重ねるロングセラーとなっています。本書の著者ワグナー氏も、2017年5月19日付けのブログ(www.jeremywagner.me)で「10年近く前に出版されたにもかかわらず、まだまだ役に立つ部分が多い」と紹介しています。その本を読んだ翔泳社の方から、「Manning社からよさそうなパフォーマンス本が出る」と連絡をもらいました。それが本書です。読んでみると、フロントエンドのパフォーマンスに関わるさまざまなトピックを幅広く、そしてわかりやすく解説されており、「Web関係者なら誰が読んでも役に立ちそうなので翻訳させてください」とお願いして本書の制作が始まりました。

本書の最大の特徴は、Node.jsのサーバをローカル環境で動かし、GitHubからダウンロードできるサイトデータを実際に自分で触りながら読み進められるところでしょう。各章のトピックに合ったサンプルサイトが用意されており、プログラマーでなくても、手順どおり数個のコマンドを実行し、ファイルを編集していけば大丈夫。画像やテキスト、それにフォントなどのファイルを小さくする方法、配信の最適化方法、JavaScriptのロード時間や実行時間の削減方法などを、抽象的な議論だけでなく、手を動かしながら学べます。最後(第12章)のgulpの解説も秀逸で、この章の内容を身につければ、第11章までに説明している最適化処理を自動化できます。

さて、コンピュータ関連の技術書は「文字にした途端に古くなってしまう」という宿命を負っていますが、本書も例外ではありません。このため翻訳に際して、原著者の意図を尊重しつつ、できる限り最新かつ正確な情報を反映するよう書き換えた部分があります。特に原著の第2章に詳しい説明があるGoogle Chromeの「デベロッパーツール」は、原著の執筆後に主要機能の名称などが変更されたため、翻訳時点の最新版に合わせて記述を変更しました。また、本書はワグナー氏の「初めての著書」とは思えないほど実にていねいに書かれていますが、読んでいて少していねいすぎる(同じような説明が繰り返されている)と感じた箇所については、相談の上、簡潔な表現に改めました。内容を明確に伝えるのが技術書の役目だと思いますのでご了承ください。

本書のすべてを反映したサイトを作れれば最高ですが、全体をザッと読んで、まずは自分のサイトで気になっている事柄や自分のサイトのパフォーマンス向上に効果が大きそうだと思われる点に焦点を当てて、改良作業を行ってみるだけでも十分役に立つのではないかと思います。JavaScriptに関する細かい話(第8章と第9章)はプログラミングの知識がないと難しいでしょうが、その他の章(画像やフォント、テキストファイルの最適化など)は、プログラマ以外の方々にも有用でしょう。『ハイパフォーマンスWebサイト』同様、10年たっても「まだまだ役に立つ」本になるのではないかと期待しています。

最後になりますが、お声をおかけくださった片岡仁さんをはじめ、翔泳社の皆様に深く感謝いたします。私の最初の訳書『マッキントッシュ物語』もそうでしたが、また良い本をご紹介くださいました。

2019年2月
訳者代表
マーリンアームズ株式会社 武舎 広幸